OCM一級建築士事務所
 


書物の中の諸断片が、ある一つの思想の形象を呼び起こす事を期待する



「人々にまじって生活しながら、しかも孤独でいる。これが創造にとって最適な状況である。」

『波止場日記-労働と思索-』 エリック・ホッファー 田中淳訳 (みすず書房)



「稀有のものより、普遍のものにこそ最もりっぱで美しいものがあるということ、自力という在り方と他力というという在り方に仕事は別れて来るということを、また、偉いと善いとのこころの別々、そういうこころの次第を、まざまざと知らされたのでありました。」

『板極道』 棟方志功 中公文庫



「隠居のことをヘヤといった。隠居は男が六十一歳になるとたいてい行なうものである。六十一の本卦がえりの祝を華々しく行うとそれから後はヘヤ住まいである。」

『家郷の訓』 宮本常一 岩波文庫



「酒飲みを左利きと云ふのは、右手が鎚手で左手がノミ手と云ふ言葉の上の洒落に過ぎないのであるが、私の友達には一緒に酒を飲む時、必ず左手で酌を受ける、何かで左手がふさがっていても、無理に左手をあけてそれで杯を取る男がいる。」

『御馳走帖』 内田百間 中公文庫



「筆は人を刺す、また人に刺されもするが、たがいに血は見ない。」

『新釈春雨物語-上田秋成-』 石川淳 ちくま文庫



「家は十坪に過ぎず、庭は唯三坪。誰か云う、狭くして且なりと。家なりとども、膝を容る可く、庭狭きも碧空仰ぐ可く、歩して永遠を思うに足る。」

『自然と人生』 徳冨蘆花 岩波文庫



「普遍性は、あらかじめ存在するものではなく、それに到達し、それを獲得することをわれわれが目指すべき地平のようなものです。」

『知の技法』 小林康夫/船曳建夫 東京大学出版会



「時間と空間が宇宙をいれる容器であるごとくに、想像力は生の全体をいれる容器である。想像力なしには、私達の生の一瞬も、死の永劫もなりたたない。」

『散歩者の夢想』 埴谷雄高 角川春樹事務所-ランティエ業書-



「閑居における瞑想、自然の研究、宇宙の観察は、いきおい、孤独者をして、造物主の方にたえず向かわしめて、自分の目に映るあらゆるものの目的と、自分の心に感ずるあらゆるものの原因を、こころよい不安の念をもって探究せしめたのであった。」

『孤独な散歩者の夢想』 ジャン・ジャック・ルソー 青柳瑞穂訳 新潮文庫



「『地球』だとか『生存』だとかいう言葉は、萎えた、貧しい言葉だと思う。わたしたちは『ヒト』として『地球』に『生存』するのではない。『人間』として『世界』を『生活(いきる)』るのだ。」

『書字ノススメ』 石川九楊 新潮文庫



「文芸は道徳的教誡を目的とするものではない、また深遠なる哲理を説くものでもない、功利的な手段としてはそれは何の役にも立たぬ、ただ『もののあはれ』をうつせばその能事は終わるのである、しかしそこにこそ文芸の独立があり価値がある」

『日本精神史研究』 和辻哲郎 岩波文庫



「もし家のもっとも貴重な恩恵は何かとたずねられたならば、家が夢想をかくまい、夢みる人を保護し、われわれに安らかに夢みさせてくれることだろうと、わたくしはいうだろう。人間的な価値を確証するものは経験と思想だけではない。夢想には人間の深部を指示する価値がある。」

『空間の詩学』ガストン・バシュラール 思潮社



「この生涯の他のいかなる時期におけるよりも、フォレオルがこの時期に、睡りのなかで夢を多く見たのは、おそらく、この極端にヨードと燐とに富んだ食べ物(海松露)のせいだったろう。」

『大理石-証人のささやかな錬夢術-』マンディアルグ 人文書院



「いかなる対象も対応すべき機能があることは明らかであるが、機能は時間に沿って変化するので、対象がその点で終わってしまうことはない。」
「私は事物の始まりと終わりを愛する。」

『アルド・ロッシ自伝』アルド・ロッシ 鹿島出版会



「塔の上の胸壁を 歩きながら おれはじっと見る
こわれた家の土台石 地面の中から
煤けた指のように 生えでている立ち木
それらから おれは 傾く太陽の光線のもとに
想像力を 送りだし
廃虚から 古い樹木から
形象や記憶を 喚び起す
それらみなに おれは 質問をしたいから」

『塔』W.B.イエイツ 新潮社世界詩人全集



「鳥籠が、鳥を探しに出かけていった。」

『夢・アフォリズム・詩』フランツ・カフカ 平凡社



「狂気へのおそれから、私たちは、想像力の旗を、半旗のままにしておくわけにはいかないだろう。」

『シュルレアリスム宣言』アンドレ・ブルトン 岩波文庫



「ものをつくり出すという行為は言ってみれば極端に個人的なものであり、自分だけの世界をそこに求めるなら、ある部分で社会状況をかなり断ち切り、自分の内側に深く降りて行かなければならない。」

『既にそこにあるもの』大竹伸朗 新潮社



「それとも、芸術の到達する境地は、自己にこだわり他者をかえりみず、自分だけを高めようとするいわば自利(利己的)の境地で、たかがしれているということだろうか。」

『貧困旅行記』つげ義春 晶文社



「創造的な世界に生きようとする人間は、誰もがすでに堕落と悪徳の危険に身を晒してしまっているのである。」

『フーコーの振り子』ウンベルト・エーコ 文春文庫



「実際、観念における老巧化は建築作品にとって技術における老巧化よりも致命的である。」

『ルイス・マンフォード』木原武一 鹿島出版会



「われわれは、技術者たちが創り出した形態を、何人かの批評家たちがわれわれに信じこませているように、単に新しい素材が入手できるようになったから、というだけの理由で取り上げるわけにはいかない、ということを注意すべきである。むしろ、形態的、かつ図像学的な骨格がピラネージやソーンの作品にみられるように、新しい素材以前に存在していたのである。」

『近代建築』ヴィンセント・スカリー 鹿島出版会



「凡そ人間が滅びるのは、地球の薄皮が破れて空から火が降るのでもなければ、大海が押被さるのでもない、飛騨国の樹林が蛭になるのが最初で、しまいには皆血と泥の中に筋の黒い虫が泳ぐ、それが代がわりの世界であろうと、ぼんやり。」

『高野聖』泉鏡花 岩波文庫


「人間の大多数が廃棄物のような人生を送っているせいだろうか。それとも廃棄物になるための人生かな。とにかく廃棄物に言いようのない身近なものを感じるんだ。」

『都市への回路』安部公房 中央公論社



「憧れに病気の入り込む余地がどれだけある?ずっと夢見てきたことを日々実現しているんだ、体調を崩している暇のあろうはずがない」

『僕たちの冒険』リチャード・バック TBSブリタニカ



「各人が自分の神話を作り出すべきだと思います。芸術家だけでなく。」

『ユリイカ-特集アンゼルム・キーファー-』 多木浩二との対談 青土社



「美的生活をなそうとするには、特別な時だけでは駄目である。いつでも、どんなものにも、美を生み出す心掛けを忘れてはならない。」

『魯山人味道』北大路魯山人 中公文庫



「昔の旅のたのしみは何でありまっしろうか? はァ、道ずれでありまっしろうの。歩いていると、ひとりでに連れができてそれで気安うなって・・・」

『忘れられた日本人』宮本常一 岩波文庫



「いま、“日本建築”と呼んでいるのも、要するに室町末期におこった書院造から出ている。床の間を置き、掛軸などをかけ、明り障子で外光をとり入れ、襖で各室をくぎる。襖には山水や琴棋書画の図をかく。」

『この国のかたち-三-』司馬遼太郎 文春文庫



「ない、ない、なんにもない。金もないし、立派な精神もない、あるのはたった一つぬめぬめした精液を放出するこの性器だけだ。」

『十九歳の地図』中上健次 河出文庫



「そして建築屋のようにこの世界の全体を造りかえたり補強したりするのはみんな他人どもだ、おれが物置きの船室に閉じこもってあれをやっているあいだに、他人どもがこの世界をいじくりまわし、《さあ、これで良し!》というのだ。」

『性的人間-セヴンティーン-』大江健三郎 新潮文庫



「僕は図書館にすわって詩人の作品を読んでいる。・・・。ときどきここかしこでページを繰る人が、夢から夢へ移るときに寝返りをするように身動きをするのみである。ああ、読書をしている人々にかこまれているのは、なんと快いことだろう。なぜみんなはいつもこのように静かにしていないのだろう。」

『マルテの手記』リルケ 岩波文庫



「伝統とはまず、二十五歳を過ぎてもまだ詩人でありつづけたいと思っている人には不可欠なような歴史的感覚を必要とする。」

『建築の多様性と対立性』R・ヴェンチューリ 鹿島出版会



「真に価値のある建物とは、「建築構成(コンポジション)の原理」によって編成され、通常「固有性(キャラクター)」と言われている象徴的な内容を盛り込まれた構造物なのである。」
「建築は実際的な意図に適応し、用途に応じるように作られると同時に、観念や空想によっても形成されることがあるのである。」

『マニエリスムと近代建築』コーリン・ロウ 彰国社



「古来、西欧文明の旗手であった正統のユートピストたちは、歴史と時間と生成をきらい、偶発事や革命といったことどもを遠ざけるために、いつも無時間的空間(ユークロニア)の安逸の中に逃避しようとしてきた。」

『反ユートピアの旅』巌谷國士 紀伊國屋書店



「ユートピアがたえず崩壊をくりかえすというのは、その幾何学的妄想や、完璧嗜好や自由への憎悪のせいであるよりも、死と悪と垢を排除しようとする欲望のせいである。」

『ユートピアと文明』ジル・ラプージュ 紀伊國屋書店



「異端は感覚の働きによるものです。そして星の影響により、感覚的な人は異端へと導かれ、理性的な人は、つねにたたえられるべき第一『理性』の、聖なる真の法へと導かれるのです。アーメン。」

『太陽の都』カンパネッラ 岩波文庫



「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでもいっしょに行こう。僕はもう、あのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか、百ぺん灼いてもかまわない。」

『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 岩波文庫



「そして私は少しづつ、映画というのは、事物そのものでなく、事物と事物の間にあるもの、だれかとだれかの間にあるもの、諸君と私の間にあるものだということに気づくようになりました。」

『ゴダール映画史1』ジャン・リュック・ゴダール 筑摩書房



「かりに家が住む道具であるとしてもそれは個別の道具の和ではない。物と物の空白、行為の概念のあいだに私たちの意識と無意識が途方もない空間と時間を広げているものである。日本の美意識における『間』は無限の空間である」 

『生きられた家』多木浩二 青土社



「われわれは人間の垢や油煙や風雨のよごれが附いたもの、乃至はそれを想い出させるような色あいや光沢を愛し、そう云う建物や器物の中に住んでいると、奇妙に心が和やいで来、神経が安まる。」

『陰翳礼讃』谷崎潤一郎 中公文庫



「キリスト教徒とイスラーム教徒は、歴史における諸事実がしめすように、おたがいひどく仲がわるい。しかし、われわれのような完全な「異教徒」からみると、このふたつの宗教は内容的にたいへんよくにているのである。」 

『文明の生態史観』梅棹忠夫 中公文庫



「ことに我々の血の中に、若干の荒い山人の血を混じているかも知れぬということは、我々にとってはじつに無限の興味であります。」

『遠野物語・山の人生』柳田国男 岩波文庫



「世上強きは弱きを欺き 人間酔うは醒むるに勝る 君の我を抛ち去りてより 此の語更に誰か聴かん」

『白楽天100選-新酒を嘗め晦叔を憶う-』石川忠久 NHK出版



「『なぜ酒なんか飲むの?』と、王子さまはたずねました。『忘れたいからさ』と、呑み助は答えました。」

『星の王子さま』サン=テグジュペリ 岩波少年文庫



「あの池がみんな氷になってさ、すっかり凍っちまったらだな、あの家鴨たちはどこへ行くのかと思ったんだよ。」

『ライ麦畑でつかまえて』J.D.サリンジャー 白水-U-ブックス



「死んだら埋めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片を墓標に置いて下さい。そうして墓の傍らに待っていて下さい。又逢いに来ますから。」

『夢十夜』夏目漱石 新潮文庫



「しかし面白くないのは彼女の理屈そのものではなくて、そのとき私が金魚に対して感じた言いおうようない劣等感であることをまだ私は意識していなかった。」

『エピクロスの肋骨-撲滅の賦-』澁澤龍彦 福武文庫



「僕はバベルの塔が天に届いていると信じるほどの純真さはもちろん持たなかった。塔の終点に着くか、僕が登るのをやめるかのどちらかだろうと思っていた。」

『僕は模造人間』島田雅彦 新潮文庫



「こいつら、夢をみてるという夢をみてるんだ。こいつらは、もうひとつ別の夢のなかにいる。起しちゃいけない。こいつらみたいに、おれも眠りたい。」

『鏡のなかの鏡』ミヒャエル・エンデ 岩波書店



「俺は、山中に倒れていて、しかも、禅堂の中に座っていて、・・・そして、夢の中に、・・・。」

『一月物語』平野啓一郎 新潮社



「しかし権力とお金はもう良質の美術も建築も創造できない。」

『ドナルド・ジャッド展 1993』北九州市立美術館図録



「芸はこれつたなけれども、人の耳をよろこばしめむとにはあらず。ひとり調べ、ひとり詠じて、みずから情(こころ)をやしなふばかりなり。」

『方丈記-鴨長明-』市古貞次校注 岩波文庫



「扉はいずれも楽音を発して回転し、宮殿を東から西へと進みゆけば、おのずから全ての音階を通過するように扉が配列されている。」

『東方綺譚-老絵師の行方-』マルグリット・ユルスナール 白水-U-ブックス

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